Tour report top
Los Angeles 1
San Francicso 1 / San Francisco 2
Seattle 1 / Seattle 2

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Brought a Knife to the Gunfight
Great Big Amp
Adult World*
Talkin' Outta School
Back When Dogs Could Talk
Nelson Algren Stopped By*
What About Laura?
Christiana
Czar of Poisonville*
Love, Fidel
Pillar of Fire
Sharkskin Suit

オレンジ色で示したのが、「アダルト・ワールド」以外からの歌で、5は Citizen Wayne から、8と9は The Racketeers から、11と12は The Hard Stuff 収録曲である。5の Back When Dogs Could Talk は、肉体労働者、ブルー・カラーへのシンパシーを歌った曲であり、限られた曲目数の中にこれを持って来たあたりにウェインの気概を感じる。また、CNNのキャスター、アマンパー女史を歌った8はMTVで紹介されたりしてメディアにもクローズアップされた。The Racketeers の中で私が一番好きな曲である。9はスタジオ録音バージョンでは不穏で終末的なディジタル・サウンドだが、ギターをバックにクレイマーがライブで歌う時、その歌詞の内容は -- 会場にいた人でこのアルバムを買ってあらかじめ歌詞を知っていた人間がどれだけいたかわからないけれど -- しばし会場がしーんと凍り付くような恐ろしさだった。邪悪な悪事の手管を語る悪徳の丘、ポイズンビルの皇帝は最後に言う。「俺を知ってるだろう お前たち 俺を毎日見てるだろう ワシントンの丘の上で ホワイト・ハウスで」また4は、MC5とウェイン・クレイマーを尊敬してやまないヘラコプターズとストックホルムで録音した曲。ミック・ファレンが歌詞を提供した Pillar of Fire、そして最後はクールなロックンロール 「シャークスキン・スーツ」で終わる。


さらに*をつけた3曲がスポークンワードの歌で、特に6はウェインがキーボードを弾くかなり長いフリー・ジャズである。このあたりがファンの評価の分かれるところで、ウェインのホームページのメッセージ・ボードには案の定「スローで退屈なラップに失望した」という投稿があり、それに対して直ちに「アタマの足りないダム・ロックでも聴きながら家で XX して寝な!」という反撃があり . . . という状況である。私の感想を述べれば、スポークンワードが全体の4分の1という比率はもう少し下げてくれた方が個人的にはもっと楽しめたかなとも思う。ただ、3曲のうち2曲は初めて聴く曲で、英語を母国語としないため語られている内容をほとんど理解できなかったということもあり、もし意味を完全に把握できていたら印象もまた違ってくるかもしれない。実際、これらの曲が伝えるウェインのユーモアは「わかる」客にはウケていた。

ウェインは終始上機嫌で、「こういう機会でもない限り、普段きみたちとは会えない」と、オーディエンスに温かく接していた。アンコールはなかったけれどみんなそれぞれ満足して帰路に着いたと思う。

ギグが終わってライブ・スペースから出て来たところでマネージャーのマーガレットが TシャツやCD を広げて販売していた。やがて私に気がつき、キャーキャー言いながら抱き合って再会を喜んだ。私は彼女の「同志」なのである。「なんでもいいから好きなもの持ってって!」というマーガレットから新譜3枚とTシャツ数枚をもらう。そばにいた30代前半とおぼしき男性と話をしたら、数年前イギー・ポップがフジ・ロックに来た時、イギー側ツアー・マネージャーだったという。物腰の穏やかなおっとりした人物で、フレッド・スミスの親戚の友人(か、友人の親戚)と言っていた。最近 L.A. に引っ越して来たそうで、なんだかイギーの若い頃にとてもよく似ている。さらにマーガレットの紹介で、ホワイト・パンサー党の本を執筆しているというデヴィッドという男性と話をした。(写真左)魚の骨のTシャツを着ているのは彼の友人のエリックで、先月日本に行って来たというからビジネスですかと訊ねると、慶応大学で国際政治学の講演をしてきたのだという。ウェイン・クレイマーのギグにはこういう人々が集まって来るのかとあらためて思う。ホワイト・パンサー党のバッジをくれた。
そのうちに、ウェインがやって来た。待っていたファンがサインを求めたり話し掛けたりするのに気軽に応じる。私が名乗ると大きな声で「ユッ・キーコー!」などと叫び思いっきり抱き締められた。先ほどのイギー氏も「ナンダ?」という感じでちょっと驚いている。「いつもきみにメイルを書こう書こうと思いながら、なにしろ. . . 」と、ウェインは全然必要のない言い訳までしてくれるのである。私はただもう、素直に、ミーハー的にウェインの言葉が嬉しかった。黄色いサングラスの元気印の女性が,ウェイン・クレイマーのらつ腕マネージャー、マーガレット・サーディである。

帰り際、「じゃ、サンフランシスコで会いましょう」と言うと、ウェインは「そいつは歌の歌詞みたいだぞ」と、歌うようにその言葉を繰り返した。

"See ya in San Francisco!"