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マザー・スぺリアーの後、ウェイン・クレイマー登場。1曲目の Brought a Knife... に続くのは、Great Big Amp という曲で、歌詞もサウンドもものすごくカッコいい。「MC5のウェイン・クレイマー」の歌。

俺のデカいアンプ
俺のデカいサウンド
思いっきりラウドにやってやる
絶対 音量下げたりしないぜ
100ワットのパワー
全開にして
このデカいアンプで
世界を征服してやる

さすがに3回目ともなると、Nelson Algren Stopped By のスポークン・ワードの歌詞も呑み込めてきて、そのシリアスなフリー・ジャズ・サウンドとは裏腹に歌の内容は大爆笑だとわかった。

帰国後マーガレットから来たメイルによれば、今ではセットの中程でキック・アウト・ザ・ジャムズ、ラマ・ラマ・ファ・ファ・ファ、ルッキング・アット・ユウから成るMC5メドレーを挿入しているそうだ。彼のホームページのメッセージ・ボードで展開された、パワー不足云々のディベートを考慮したのだろうか。ウェインはどういう気持ちで昔の音楽に逆戻りしているのだろう。 意外と楽しんでいるのだろうか。MC5ファンとしては、それが聴けなかったことはやっぱりとても残念だけれど。自分にとっては、Christiana, Pillar Of Fire など、スローだが力強いメロディ・ラインを持つとても好きな曲が入っているこのセットは、3回聴いても全然飽きなかった。

シアトルのギグも無事終了。ウェインは上機嫌でステージを後にする。終了直後にダグと再び立ち話をしたが、「この間ミック・ファレンとレコーディングした」と何気なく言うのを聞いて興奮する。去年サンディエゴで見た時と同じメンバー(アンディ・コルクホーン/gtr 、リック・パーネル/dr)で新曲を4曲録音したそうだ。「どこですか?どこのレーベルですか?」と興奮する私にダグはちょっと戸惑い気味で「う〜ん、ビジネスのことは僕は聞いてないから知らないなあ」との答え。とにかく吉報。(最近ファレン先生のファン・サイトである Funtopia にもこのニュースが載った。新しいアルバム・タイトルは今のところ "Migrant Gunmen" だそうだ。)
マザー・スペリアーのマーカスとジムと最後の会話を交わした。マッスルから出た彼等の新譜、Sin をくれた。数日前にラスベガスで亡くなったジョン・エントウィッスルの話題になり、その場にいた誰もがしんみりする。

ウェインに最後の挨拶をしに楽屋に行った。彼等は翌日、シアトル近郊の町ポートランドに進むのだ。体に気をつけて、と抱き合って別れた。彼の体はまだ汗ばんで火照っていた。


帰国し、あらためて3回のギグを振り返ってみて、あのような音楽/ロックを鑑賞し評価し、そして楽しむ機会が、日本のロック・ファンにどれだけ与えられているのかと考える。ウェイン・クレイマーのような地味な活動を続けているもはや若くはないロッカーは、ただでさえ不振のこの国の洋楽ロック市場の中で、さらに苦戦を強いられている。現状で来日はまず不可能、新譜はおろか、カタログになっている作品や再発されたアルバムの配給さえままならない状態だ。とても残念に思う。というのも私が僭越ながら考えるのは、ウェイン・クレイマーのように、過去やジャンルにとらわれず自身の中でロックを進化させ続けているようなロッカーの音楽を知ることによって、日本の若いロック・リスナーの興味がいろんな方向に広がっていけばいいな、と願うからだ。パッケージ化されて提供されるステレオ・タイプのロックだけではなく、ジャズやスポークン・ワードのパフォーマンスにも興味を持ったり、ミック・ファレンがインタビューで述べていたように、自分にとって価値のあるものをいろんな分野から捜し回って、自分で自分を啓蒙していくような環境になれば、日本のロックはさらに多彩で面白いものになるんじゃないかと思う。そしてさらに僭越を承知で言えば、それはこのサイトが目指す最終目的の一つでもあるのだ。そういう流れができた時、誰かがウェイン・クレイマーの名を呼び、彼は日本にやって来るんだろう。あのファレンの歌詞みたいに。海賊の王のように。

ウェイン・クレイマー 2002年「アダルト・ワールド・ツアー」レポート 完

付記:ロサンジェルスのトロバドールで私が出会った、イギー・ポップのツアー・マネージャーとしてフジ・ロックに来たという、おっとりしたもの静かな男性のことを憶えているだろうか。マーガレットからのメイルで数日前に知った。若かりしイギーに似ているはず -- 彼は正真正銘、イギー・ポップの息子であったのだ。あの時、ウェインのアルバムの売込みがうまく行かずウェインの前で落ち込む私に、彼は「メゲるなよ、がんばんなよ。」と励ましてくれたことを思い出した。

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