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Los Angeles 1 /Los Angeles 2
San Francisco 2
Seattle 1 / Seattle 2

「ボトム・オブ・ザ・ヒル」は、サンフランシスコの市街地から外れたウォーター・フロントの工場地区にあった。ガイドブックを見ると「危険な地区なので昼間でも一人歩きは避けた方がいい」と書いてある。暗くなってホテルから乗り込んだタクシーの若い運転手には、「あのホテルから拾った客で、この地域に行く人間を乗せたのは初めてだ。」と言われた。

パスポートをしっかり提示し、中に入る。ライブ・スペースの奥の部屋に数台のビリヤード台が見えた。最初の前座バンドが最後の数曲を終えるところだったが、存在感のあるボーカルの青年は -- サンフランシスコという先入観かもしれないけれど -- 服装から髪型までジム・モリソンの若い頃〔太っていない頃)にそっくりだ。異国の薄暗いクラブで、なんだかタイム・スリップしたような不思議な感覚を味わう。そしてオリジナルらしい彼等の曲がどれも悪くない。

ちょっと脱線するけれど、今年4月にロンドンのボーダーラインで「ボブ・ディラン・ナイト」と題された夜に、イギリスの若い無名バンドを3組見た。(ディランの来英を記念して彼らはそれぞれディランの歌を1曲カバーすることが求められる。)そして彼らも、それぞれに個性的でオリジナリティーがあるいいバンドだった。スカコアとかBDRとか、チマタで人を集めて熱狂させているけれど、私がほとんどその価値を認識することができないロックではない。とても勇気づけられた。2番目のバンドなど、出てきた時は全員スキンヘッドのイカニモな風貌だったので「やっぱりきたか」と思ったが、始まってみれば「サイケデリック」なのだ!トリの「セイビング・フェイス」というバンドは、太めのカート・コバーンみたいなボーカルがすばらしく、力強いメロディーを持ち、スローな歌も立派で感動した。オーディエンスの中に明らかに音楽メディアかレコード会社のA&Rと思われる男性2人組がいたが、彼等も強い印象を受けているようだった。 ウェインは最近のクレイマー・レポートの中で、今ヨーロッパやアメリカでロックの新しい潮流が芽生えようとしていると書いていたが、確かにその通りなのかもしれない。

2番手のマザー・スペリアーが出てくる。ヘンリー・ロリンズがホレ込んだのもうなずける優れたバンドだとあらためて思う。日本の若い女性の間では今、アパレル・メーカーや広告代理店が「アーバン・ボヘミアン」などというネーミングで売り出している昔のヒッピー/サイケデリック・ファッションが大流行だが、客の中に典型的ヒッピー・スタイルの若者がいる。酔っているのかハイなのか、突然ステージに上がって演奏途中のギターのジムの前に座り込んで、ジムといっしょに両手で彼のギターをかき鳴らし始める。ジムも特に驚いた様子もなく、客も喝采したりして面白かった。ひとしきり「演奏」して、気がすんだみたいにステージを降りて行ったのがかわいらしかった。

スペリアー終了後のブレイクにウェインが出てきて後方にいたスタッフの青年と話をしていたので、ギグの後、日本のファンへのメッセージをビデオで撮影させて欲しいとお願いする。快く了承してくれた。

ウェイン・クレイマー登場。やはり Brought a Knife to the Gunfight で始まる。いい曲だ。他の人たちもじっと聴き入っている。2曲歌い終わったウェインは「このツアーは俺の新しいアルバム、アダルト・ワールドのプロモーションなんだ。会場で限定10枚だけ販売するが、買った人は必ず友達に宣伝しなけりゃいけないんだぜ。」と言う。
Love, Fidel は、キューバのフィデル・カストロ首相が革命政権樹立前に、高地のジャングルに潜伏しながら恋人に手紙をしたためる . . . という 実話を歌った曲。「君たちの好きな独裁者(=Dictator)は誰かな?ジムはディック・マニトバだそうだ。俺はキューバのカストロさ。」というMCで紹介される。
「ピラー・オブ・ファイアー」の冒頭はラップで始まる。この曲が収録されているアルバム、「ハード・スタッフ」ではウェインの当時の夫人、マージョリーが童謡みたいに歌っているが、ラップ・バージョンも面白い。ギターの堅くエッジーな音が気持ちいい。

昨晩のトロバドールと同じく、最後の「シャークスキン・スーツ」を除けばアップ・テンポの曲も派手なギター・ソロもない渋いセットなのに、これだけ精神が昂揚するのは歌詞の力も大きいだろう。2日目は前日より余裕をもって聴けたから、スポークン・ワードの曲もバリエーションとして楽しめた。

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