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何も知らずに電車で座っていて
ウェイン・クレイマーが目の前に立ったら
私は席を譲ってしまうかもしれない
1年3ヶ月ぶりに再会したクレイマーはそれくらい
柔和で物静かな初老の大学教授みたいな風情だった
しかし
銃撃戦に 俺はナイフで臨んだ
とおもむろに歌い出す彼の眼は
眼鏡の奥から鋭い眼光を放ち
まっすぐ前方の一点を見据えて
微動だにしないのだ
クレイマーの眼が見てきたもの
それに近付きたくて
それに敬意を表して
私達はここにやって来たのか
そうではなく
磁石のように 文字通り彼の足元に聴衆を引き寄せたのは
今のクレイマー 今の彼の音楽だった
初老のギタリストの指先が奏でるリフの
鮮烈な輝き 鋭利な刃先
それは決してノリのいいロックンロールや
ラウドなメタル・サウンドではなく
ライブが終わって家路につく者の
脳に叡智のシワが新たに1本刻まれているような
そういう体験だった
ロサンジェルスの「トロバドール」(6/25)、サンフランシスコの「ボトム・オブ・ザ・ヒル」(6/26)、シアトルの「グレイス・ランド」で行われたギグのレポートを掲載する。
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