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Los Angeles 2
San Francicso 1 / San Francisco 2
Seattle 1 / Seattle 2

トロバドールは、サンタモニカ・ブルバード沿い、ウェスト・ハリウッドの高級住宅街に隣接したエリアにあった。アメリカやイギリスのクラブやライブ会場の入り口には普通、凶暴な風貌の「バウンサー」がいて入場者を厳しくチェックしているが、この時、身分証明書を持っていなかった私と夫を黒人のバウンサー達はどうしても中に入れようとしない。カリフォルニア州では酒類を出すこのような場所に入れるのは21歳以上に厳しく制限され、万一抜き打ち査察などが入った時にこれを守っていないと直ちに営業許可を取り消されるから彼等も徹底している。以前もサンディエゴのある会場で、入り口を出たところでビールを飲んでいたら、マネージャーが出て来て申し訳なさそうに「悪いが、アルコールは中で飲んでくれないか」と言われたことがあった。またカリフォルニア州の場合、会場内は絶対禁煙である。こういうところは日本と全然異なる点で、私達も思い出していいはずだったのだが、アメリカは1年ぶり、しかも第1回目のライブだったのですっかり忘れていた。結局ホテルにパスポートを取りに帰るハメになった。そして戻って来た私達にバウンサー達の態度は決して感じ悪くはなくて、「ワルかったな、けどアンタたちのためでもあるんだぜ」と言う。全くその通りである。

そんなことでモタモタしていたために、入った時には既に前座2バンドのうちの2番目、マザー・スペリアーのセットが終わろうとしていた。(後でわかったのだが、もう一つの前座バンドは結局キャンセルだったそうだ。)マザー・スペリアーといっても日本で知っている人はあまりいないかもしれないが、実は彼等は2代目「ロリンズ・バンド」なのである。ヘンリー・ロリンズのバック・バンドとして近年ずっとツアーとレコーディングに参加しているL.A.の実力派3人組で、数年前にはロリンズと共にフジ・ロックに出演している。最新アルバム "Sin" をウェインのレーベル、マッスル・トーンからリリースし、今回のツアーでは全てのギグで前座を務める。

クレイマーが始まるまでしばらく間があったのであたりを見回していると、ダグ・ラーンが歩いているのが目に入った。今回のツアーではどういうラインアップで臨むのかとても興味があったが、ここ数年ウェインのギグでずっとベースを弾いているラーンが今回も参加しているとわかる。やがてステージに現われた若いドラマーも去年見たギグと同じく、エリック・ガードナーだった。さらに今回は、マザー・スペリアーのギタリスト、ジム・ウィルソンがリズム・ギターとキーボードで加わっている。客の年齢層はさすがに高いが、20代後半と思われる人もかなりいた。ロンドンでもいつも同じことを感じるのだが、客がとてもリラックスしていて変な緊張感がない。どんなに混んでいても日本で時々見るような「場所取り」みたいなことはもちろんないし、カメラなんか持っていると背の高い男性達はみんなで前に押し出してくれたりする。演奏中も彼等はけっこう出たり入ったり行ったり来たりで、本当にリラックスして音楽とビールを楽しんでいるのがうらやましい。

やがてステージに現われたウェイン・クレイマーは、薄く鳶色が入った眼鏡をかけてカーキ色のブルゾンを羽織り、ギタリスト、ロック・ミュージシャンという感じはまるでない。眼鏡のせいか、短い間にずいぶん年を取ったように見えて、ちょっとびっくりした。

最初のコードが静かに鳴らされ、"Brought a Knife to the Gunfight" が始まった。初めて聴く曲 -- しかしスローで静かなそのメロディーは、圧倒的力をもって、その場にいた全ての人間の心臓を、いきなりわしづかみにしたのだ。

2曲歌い終わったウェインの口から、今回の全米ツアーは 7月16日にリリースされる5年ぶりのソロ・アルバム、「アダルト・ワールド」のプロモーション・ツアーであると知らされる。そのためセット・リストのほとんどがこのアルバムからの新曲だった。会場で手に入れたCDの曲目リストと後で比べてみて、入っている全10曲のうち7曲を、収録されている通りの順番で演奏していたことがわかった。このセット・リストは続くサンフランシスコ、シアトルでも同じで、次ページの通り。

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