フューチャー/ナウに異変が起こっていることに気づいたのは昨年12月のことだった。日本での劇場公開に結びつくかもしれない問い合わせのことで数本のメイルを交換し合った後、突然連絡が全く途絶えたのだ。数回返事を催促してみたが回答は皆無で、自分としては諦める他なかった。何か重大な問題が発生したに違いないと思った。
今年1月になって、マイクとデニスをマネージしているスヴェンガリー音楽事務所とのメイルのやり取りの中で、フューチャー/ナウ側とメンバー側との間に問題が発生していたことが偶然判明した。"MC5*A True Testimonial" (以下 "ATT" とする)の日本上映が当面不可能だという事実を確認した。
ミック・ファレン氏がローカル紙「デトロイト・ニュース」に掲載されたATTに関する記事をメイルで送ってきたのは、それからしばらく経過した3月31日のことだった。(同じ記事は追ってフューチャー/ナウからも直接送られてきた。)5月4日にリリースが予定されていた同作品のDVD発売にウェイン・クレイマーがストップをかけた、という内容の同日付記事で、自身もこの映画のためにインタビューされたファレン氏も非常に驚き、ショックを受けていた。記事を書いたスーザン・ウィットオールに対訳掲載許可をお願いしているが、まだ返事がないので残念ながら今は日本語でここに紹介することができない。論調としてはフューチャー/ナウ側の立場で書かれており、この記事を発端にウェイン・クレイマーは轟々たる非難の渦中に投げ込まれた。
リーバイス/コマーシャリズム論争がようやく収まったと思ったら、今度はそれをさらに上回るスケールの激論がウェインのメッセージ・ボードで戦わされている。これを受けて、今年夏のワールド・ツアーのために結成されたDKT/MC5専用にオープンしたウェブサイトでメンバー3人がそれぞれステートメントを発表した。マッスル・ミュージックの許可を得て、まずウェインの声明文から対訳を掲載する。文中の「レベッカ・ダーミナー」とは、ロブ・タイナー(本姓はダーミナー)の未亡人(ベッキー)で、ロブの一家とウェインは長年確執があったことが一部では知られていたが、ATTの撮影を通じて彼女やその娘と心を通わせることができたことを心から感謝し嬉しく思うということを、ウェインは以前繰り返し書いていた。やっと修復しかけたこの一家との人間関係を、このような形でブチ壊されたウェイン・クレイマーの失意の大きさは計りがたい。フューチャー/ナウの3人とは、自分もヨーテボリ・フィルム・フェスティバルで数日間行動を共にし、とても楽しかったので、こんな問題が発生し、ここまでこじれてしまったことが本当に悲しい。
ロック・バンドをめぐる権利関係のこういうトラブルは、それこそ星の数ほど発生しているのだろうが、メンバー自身が直ちにこのような形で直接見解を発表するMC5というバンドの姿勢を、ファンは誇りに思ってよいと思う。
ウェイン・クレイマー声明文
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