後で聞いたことだが、この日成田から都内に向かう途中、会場の状況をチェックするために幕張メッセに立ち寄ったそうである。そのため赤坂のホテルに彼らがチェックインしたのは午後11時を回っていた。翌日にはウェ インとマイクも到着、成田に着いたその足でリハーサル会場へ向かったそうだ。

タイトなスケジュールの合間を縫って、フェスティバル開幕前に皆で渋谷に買い物に出かけたという。ウェ イン・マーガレット夫妻はたまたま東急109に入っ(てしまっ)たらしい。日 本人の私でさえ踏むのを畏れる、このジャパン・ギャルズ・ポップ・カルチャーの牙城で、どの店でも店員が「鼻にかかった不思議な言葉を発しながら(と、ウェ インが物真似してみせる)、ず〜っと店内を歩き回っているんだ!」そうで、これをも のすごく奇異に感じたようである。渋谷の繁華街の暑さには参ったらしかったが、とにかく少しでも余暇を楽しんでもらえたのはよかった。日本市場の ダイナミズムを体感したことだろう。

2004年サマー・ソニック開幕日当日は、午後2時頃幕張メッセに隣接したホテルにチェック・イン。友人と合流してDKT/MC5公演会場があるメッセ内をそぞろ歩く。4時半開演のダムドと6時45分のMC5以外興味はなかったので建物の外に出る必要もなく、時間の余裕は十分過ぎるほどあった。サマー・ソニックに来るのは初めてだったが、天井が高い広大な薄暗い空間に屋台が並んだ不思議な巨大縁日的空間で、空調も効いているし、音楽を楽しめる環境だと思った。命がけで鑑賞しなければならなかったという横浜のロック・オデッセイに比べれば遥かに恵まれている。

マーガレットから携帯にメッセージが入っていて待ち合わせの場所を指定しているのだが、情けないことに何回聞いてもこれが聞き取れない。きちんと解説してもらえば英語でも理解できると思ったので、手近の外国人を探し "Do you speak English?" とヘンな質問を発して代わりに聞き取ってもらう。とても親切な男性 で、メッセージに真剣に耳を傾け、待ち合わせ場所とおぼしき地点までわざわざ 私たち2人を案内してくれた。何のことはない、マーガレットは「ソニック・ステージの出口」と言っていたそ うなのだが、友人と2人で「これって・・・出口?」「入り口とも考えられるよね・・・」などとモメているといきなり背後にウェインとマーガレットが立っていた。

マーガレットはともかく、MC5のウェイン・クレイマーが開演直前にこんな所をシマシマのシャツを着てほっつき歩いているものであろうか、と一瞬思ったけれど、とにかく2人に会えてよかった。2ヶ月以上にわたってツアーに出ているにもかかわらず、2人ともすっきりと元気そうだ。公演終了後の待ち合わせについて打ち合わせをし、ひとまず別れた。彼らもこの日本の祭り的雰囲気を楽しんでいたようである。

4時半からマウンテン・ステージでダムドを聴く。昔のレパートリーをたくさんやってくれたので、思ったより知っている曲が多く、すごく楽しめた。キャプテン・センシブルの存在感はやっぱりすごい。「英国ロック界でいちばんヘンな人」という評判を裏切らないパフォーマンスでとても楽しかった。

開演時刻間近にソニック・ステージに入る。満員とは言えないけれど、かなりの人が入っていて安心した。グリーンデイとかぶっていることもあり、鳥井賀句氏 などは「おじさんとおばさん以外ほとんど客がいなかったらどうしよう」と心配して下さっていたくらいなので、若い人が大勢いたのが嬉しかった。

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台風12号が熱帯低気圧に変わった2004年8月5日、DKT/MC5の第一陣が成田に到着した。ウェイン・クレイマーとマイク・デイビスは1日遅れで着くと聞いていた。この日私は会社で通常通り勤務していたけれど、このバンドがついに日本の地を踏んだかと思うと、ほぼ定刻の飛行機到着時刻、午後5時45分になると感慨深いものがあった。数年間にわたり自分が精魂込めてウェブサイトを構築してきたバンド、MC5が遂にこの極東の地にやって来たのだ。