2005年2月25日、ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールでサン・ラー・アーケストラとDKT/MC5がほぼ40年ぶりの共演を果たした。思い思いに楽器を奏でたり歌ったり叫んだりしているステージ上のミュージシャンは総勢20名。スター・シップは今にも空中分解しそうなのに、航路はしっかりと土星目指して進んでいった。
聴きに行くことを半ば諦めていた今回のロンドン公演だったが、いてもたってもいられなくなって、自分はやっぱり慌ただしく荷物をまとめて出かけてしまったのである。
最初にアーケストラが登場。実物は初めて見る彼らの衣装がユーモラスで美しく、楽しいことが起こりそうで見ただけでわくわくしてきた。この時点では、2つのグループが終止同じステージで演奏するのかと思い込んでいた自分は、やがてウェイン達が出てくるのかとぼーっと待っていたらやおら演奏が始まったのでびっくりした。
が、自分のようなサン・ラー初心者でも十分楽しめるすばらしいパフォーマンスだった。予測していたよりフリー度が低かったこともあり、想像していたような難解な音楽ではなくて自然に入り込め、すばらしいジャズの世界を堪能させてもらった。(上の写真左端に立っている男性がマーシャル・アレン。)
シアター風の演出があったり、"Sun Ra is a mystery!"と歌いながらメンバーがステージを降りて客席の通路を行進したり、オーディエンスを誘って合唱させたり、盛りだくさんの演出で本当に楽しかった。スタンダードなジャズも数曲演奏したのだが、いずれも洗練されたキレのいいリズムがクールな絶品だった。さらにフェスティバル・ホールの音響効果がすばらしく、音の一粒一粒が、まさに星の如くに輝いている感じだった。
ピンボケだけれど上の写真が主にボーカルとMCを担当していた男性。この写真だとわかりにくいが、この帽子はヒトデ型でした。
こんなに神秘的で美しく、しかもユーモラスで愉しい音楽をライブで聴く機会を得たことが嬉しい。かつてデニス・トンプソンが、インタビューでフリー・ジャズの巨星ジョン・コルトレーンをこう評したことがある。「音楽の世界でトレーンのような人間は美術の分野におけるレンブラントみたいなもんだ。音楽の全景をまず示してくれたのさ。」この日サン・ラー・アーケストラを聴いて、彼の言葉の意味が多少理解できたような気がする。