2003年、100クラブでのギグに加わったチャールズ・ムーア教授らのホーン・セクションが今回も参加し、大きな会場で音の幅がすばらしく広がる。アーケストラとの40年ぶりの共演ということで、ウェインを始めバンドのスピリットが高揚している感じで、ウェインのソロのキレも冴え渡っていた。
日本公演の時と同じく、2曲目にマイケルが I Can Only Give You Everything を歌う。もう少し声量が欲しいところだが、バックの演奏が一生懸命盛り立てようとしている感じだった。パワーだけじゃないデニス・トンプソンのドラムがこの音楽をソフィスティケイトさせるのだ。
そしてゲスト・ボーカリストのハンサム・ディック・マニトバとリサ・ケコーラ。この起用は大成功だった思う。昨年ボーカルを務めたマーク・アームとエヴァン・ダンドがロブ・タイナーの繊細でポエティックで学究的なアブなさを表現していたとすれば、今回の2人にはパワーとソウルがあった。
3曲目は今回ギターに加わったガンズのギルビー・クラークが Tonight を歌う。2003年のDKT/MC5結成以来、リズム・ギターはニッケ・ロイヤル、マーシャル・クレンショウ、デニツ・テックら、クールなギタリストが務めてきたわけだが、4人目のこのギルビーも控えめでありながら存在感があるパフォーマンスで、時々鳴らすソロがとてもカッコよかった。
日本公演ではおとなし過ぎるくらいのマークやエヴァンだったが、ディックはこのショウの中心となってMCを務め、座ってないで前に来い!と、オーディエンスに盛んに呼びかけ、ステージ前はやがて熱狂し踊るワカモノでいっぱいになった。尊敬するMC5のアニキたちを背後に従えて臆する様子もなく、我が物顔にステージを練り歩き、フットワークのあるレミーのような堂々たる歌いっぷりにすっかり感心してしまった。キック・アウト・ザ・ジャムズのリード・ボーカルは彼で、ロイヤル・フェスティバル・ホールというすばらしい会場でMC5をバックに、まさに至福の時を味わったことだろう。
一方リサ姉御の貫禄も大したしたもので、パワフルなすばらしい声に恵まれ、よく言われることだろうが、まさにティナ・ターナーを思わせる、しかしさらにフリーキーな、エネルギッシュなパフォーマンスだった。最初に歌った Motor City Is Burning の迫力とグルーヴはすごかった。同年代の女性ブラック・シンガーが「ダンス」や「容姿」にフォーカスしているのに比べ、リサは無造作なアフロ・ヘアに服や外見もご覧の通り、まだ若いにも関わらずこの泥臭く、ぶっといおっ母さんの雰囲気はすばらしく異色だ。今年のグラミー賞にノミネートされたというのが頷ける真に実力派シンガーである。

ウェインがハープを吹いているちょっと珍しい写真。セット・リストは左記の通り。(10、11、12に関しては誰が歌ったかメモし忘れてしまった。)

1. Ramblin' Rose (Wayne)
2.
I Can Only Give You Everything
  (Mike)
3. Tonight (Gilbey)
4. Call Me Animal (Dick)
5. Sister Anne (Dick)
6. High School (Dick)
7. American Ruse (Dick)
8. Motor City Is Burning (Lisa)
9. Over and Over (Lisa)
10. Shakin' Street
11. Looking At You
12 Miss X
13. Human Being Lawnmower (Dick)
14. Kick Out The Jams (Dick)
15. I Believe To My Soul (Lisa)
16. Starship
(DKT/MC5, Arkestra, Horns, and David Thomas)
17. Rama Lama Fa Fa Fa
(DKT/MC5) - Encore

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休憩の後、サン・ラーの詩の朗読が流れる中、DKT/MC5がステージに上がり、ウェインが歌う「ランブリング・ローズ」でスタートした。(ランブリングのギターの入り方は何回聴いてもカッコいい。)ホールの音響の良さも手伝って、サウンドもパワーも日本公演を上回るパフォーマンスだった。疾走感あるソリッドなサウンドで、オヤジ・ロック度は遥かに低かった。