クレイマー・レポート No.1 (2000年11月)

まず国政について。友人もファンも驚きはしないだろうが、俺は徹底的にラルフ・ネイダー支持だ。70年代にキャリアの道を踏み外したばっかりに、「ケンタッキー州レキシントン連邦刑務所卒業生」ってことになってしまった俺は、その結果参政権を失ってしまっていたが、最近復権がかなった。機会があるなら毎日だって投票したいくらいだ。ブッシュとゴアという2人の2代目議員の戦いは結局のところ、「2匹の狡猾なドブネズミが豚の脂肪のでかい塊を争う図」を披露して終わった。ラルフが言うように、「どちらかマシな方の悪魔に投票しても、悪魔に票を投じることに変わりはない」わけだ。4年なんてすぐ経つ。俺は自分なりに、「緑の党」がアメリカや世界で1つの勢力となるよう協力していきたいと思う。

文化活動としては、この半年間イギリスとアメリカを行ったり来たりしていた。ロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールで開催された「アウトロー・フェスティバル」で、ペル・ウブとすばらしい共演ができた。ブロック・エブリーとポール・イルもバンドのメンバーとして連れて行くことができ、本当に満足のいくコンサートだった。あの体験。すばらしいサウンド、すばらしい照明。パンク・バンドが出演するようなハコと違って、悪臭もない。いつまでも留まっていたかった。

リーズに1週間滞在し、そこの若いバンド、パーヴァを指導した。最近頭角を現してきた20歳の若者5人から成るバンドで、マッスル・ミュージックの支援を受けている。彼らは俺の目に留まっただけじゃない。エンブレイスを数枚プロデュースしてイギリスで1千万枚を売ったデイブ・クレフィールド、そしてザ・オーヴァーシーアーというバンドでも活動しているDJ兼ソングライターのロブ・ハウズも彼らの音楽に魅せられた。俺たち3人は、バンド・メンバーと共にアダム・ピアソンのスタジオに入り、将来リリースするための数トラックを録音した。なんという喜び!若い奴らの魂は純粋で、デイブとロブはアイデアに満ち溢れている。すごく満足のいく結果が得られた。間もなく発表できると思う。

レック・コワルスキー監督のジョニー・サンダース伝記映画 "Born To Loose" に入れるため、「ソロ・エレクトリック・パフォーマンス」なるものの撮影で先月もイギリスに行ってきた。まだ製作の初期段階だが、レックはすばらしいドキュメンタリーを作り上げてくれるだろう。カメラの前でギャング・ウォーの日々を語る自分の姿を、スタンディング・オンリーの劇場で見るのはいろいろな面で辛かった。ギグもうまくいった。ソーホーのインターネット・カフェでやったんだが、レックはそれもフィルムに収めた。

マッド・フォー・ザ・ラケットの立ち上げにも凄い時間を費やした。何のことかわからない(あるいは俺が前に書いたことを読まなかった)人のために付け加えると、俺と元ダムドのブライアン・ジェイムスで、最近「マッド・フォー・ザ・ラケット」って新しいバンドを結成したんだ。最初は「ラケッティアーズ」(「ヤクザ」)というバンド名だったんだが、同じ名前のバンドが世界中にゴマンとあることを発見し、こっちのプロジェクト名を変更した。一種のロックンロールの実験みたいなもので、ブライアンと俺が協力して曲を書き、それに従って他のミュージシャンにプロジェクト的に集まってもらうというやり方だ。だからアルバム製作にあたっても、毎回違うラインアップと違うサウンドを提供する。しかし核となる部分、俺とジェイムスは変わらない。リリース第一弾は「ラケッティアーズ」で、ジミ・ヘンドリックスとザ・フーが初期にホーム・レーベルとしていた伝説の「トラック・レコード」から先週、少量限定でイギリスでのみリリースされた。参加ミュージシャンは、ダフ・マッケイガン、スチュアート・コープランド、クレム・バーク、アダム・ピアソン、ブロック・エブリー。彼らには本当に感謝している。12月にイギリスでバンド発足ギグを2回行なう予定だ。(12日にダブリン、13日にロンドン)。その時にはプライマル・スクリームのマニがベースを弾いてくれることになっている。今から楽しみだ。ワールドワイドのリリースは、2001年春を予定している。

ここロサンジェルスでは、ベイクド・ポテトでギルビー・クラークと短いセッションをやった。残念ながら、かなりルーズなジャム・セッションで、あっという間にブレイクしてしまったが。また、親友であり俺の導師でもあるジョン・シンクレアが短期間ウェスト・コーストを訪れたので、俺たちはいっしょにサンフランシスコ北部からカリフォルニア沿岸を数箇所プレイして回り、ここロサンジェルスでも数回のギグを行なった。ショウ・ビジネスにおいてシンクレアほどハードに活動している詩人はいない。スパイボーイ・レコードから最近リリースされた彼のCD「アンダーグラウンド・イシューズ」や、彼がサン・ラのマテリアルの記録としてレコーディングしたCDをチェックして欲しい。アライブ/トータル・エナジー・レコードから出ている。

アライブ・レコードと言えば、「コカイン・ブルース」という俺の新しいCDがアライブから出た。俺は1975年に逮捕され、コカイン密売で起訴されて4年の実刑判決を受けたわけだが、その時たくさんの人が救いの手を差し伸べてくれた。2年半を務めて1978年に出所して間もなく、俺の大親友の一人、ミック・ファレンがロンドンのディングウォールズでの祝賀ギグを企画して招待してくれたんだ。今回出たCDはその時のライブ盤で、あの夜俺のバックのピンク・フェアリーズでベースを演奏してくれたアンディ・コルクホウンが、今年になって古いテープに入っているのを偶然発見したんだ。完璧主義のファンのために、ライブ以外の他のレアな音源も入れた。

9月、ポートランドで開催された音楽業界のコンベンション、ノース・バイ・ノースウェストに参加した。業界の著名人数名と一緒に、ミュージシャンによるアルコールとドラッグ乱用(俺が少しばかり詳しい分野だ)を討議するパネルに出席して話をした。問題を抱えるミュージシャンを救援するために設立されたさまざまな団体に関する認識を高めるために企画されたミーティングだ。これを読んでいる人自身、あるいは、自分のバンド・メンバーで、この問題で悩む人がいるなら、次の団体に連絡してみるべきだ。どうしたらよいか、何らかの情報を提供してくれる。ミュージシャン・アシスタンス・プログラム、ミュージケア、スイート・リリーフ・アルコホリック・アノニマウス。

ノース・バイ・ノースウェスト参加中、アット・ザ・ドライブインに出会った。いい奴らだ。ルックスが好きだ。何か懐かしい感じがするんだ。今月後半彼らに関して何か書いてウェブに掲載するかもしれない。その時は知らせる。次のソロ・アルバムのための曲も書き溜めている。今のところいい感じで出来上がって来ている。俺に関するその他のビッグ・ニュースと言えば、あまり詳しく描写するつもりはないんだが、俺は去年、腎臓結石で4回救急病院に担ぎ込まれた。で、ついに先週、でかい石をひとつ摘出する手術を受けたんだ。まったく未知の痛みの世界を初めて体験したが、最悪の状況は脱した。女であることの意味が分かったと言っておこう。つまり出産の痛みを味わったのさ。まじめな話、救急室の外科医の話によると、腎結石の女性患者は「分娩より痛い」と言うそうだ。ルイ・アームストロングの言葉を借りて「苦しみは全て置き去りに」しよう。

俺が制作したコンピ盤、「ビヨンド・サイバーパンク」の最終編集作業とライナー・ノーツが完成したところだ。リチャード・ヘル・エンド・ボイドイズ、ディー・ディー・ラモーン、ジミー・ゼロの新しいバンド、レズビアンメイカー、マザー・スーペリアー、ロン・アッシュトン、マッドハニー他、多くのミュージシャンが参加してくれた。マッスル・トーン・レコードからの第一弾として、MP3配信会社、ミュージック・ブリッツ・コムとの共同プロジェクトとしてリリースされる。マッスル・トーンとは何かと言うと、俺とマネージャーのマーガレット・サーディで、マッスル・トーン・レコードというインディー・レーベルを設立したんだ。新旧含めた俺のソロ作品、そして2001年に計画しているさまざまな他のプロジェクトはすべて、マッスル・トーンを通じて発表されることになるだろう。

フューチャー・ナウ・フィルムが製作中のMC5ドキュメンタリー映画、「トゥルー・テスティモニアル」が、ポスト・プロダクションの局面に入った。感謝祭の週にシカゴに試写を見に行く予定だ。製作スタッフの話によると、4時間半に及ぶ未発表のライブ映像、ホーム・ビデオ、インタビュー・フィルムが見つかったんだと言う。凄い映画になるはずだ。

イクスピアリエンス・ミュージック・プロジェクトが企画したジミ・ヘンドリックス・リスペクトのイベント関連で、12月2日から1週間シアトルに行き、パネルとコンサートに参加する予定だ。クライマックスは、このイベントのためだけに俺がアセンブルしたスペシャル・バンドのギグということになるだろう。リーブス・ガブリエル(デヴィッド・ボウイ、ティン・マシーン)と俺が交代でギターを弾き、ジョニー・ゼズニク(グー・グー・ドールズ)がボーカル、そして俺のバンドからポール・イルとブロック・エブリーがベースとドラム、というラインアップだ。ヘンドリックスの作品、そして俺とリーブスのナンバーをそれぞれの数曲演奏することになっているが、他に何が飛び出すかわからない。ミッチ・ミッチェルとビリー・コックスも来るはずだし、ケニー・ウェイン・シェファードとダブル・トラブルも参加予定だ。全員そろってステージで何か面白いことができるかもしれない。

腎臓はしくしく痛むが、俺のスピリットは高揚している。このサイトでファンからのEメイルに俺が直接答えられる方法を模索中だ。まだ完成途中だが必ずそうできるようにする。これまでのところ、メイルは俺のところに全て転送されていて、どれにも感謝している。どんどん送って欲しい。友達にも広めてくれ。

じゃ、元気でな。



ウェイン・クレイマー
カリフォルニア州ロサンジェルス
2000年11月14日
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