The Hard Stuff (1995) Epitaph Records 86447-2
  1. Crack In The Universe (Kramer)
  2. Junkie Romance (Farren/Kramer)
  3. Bad Seed (Farren/Kramer)
  4. Poison (Kramer)
  5. The Realm Of Pirate Kings (Farren/Kramer)
  6. Incident On Stock Island (Kramer)
  7. Pillar of Fire (Farren/Kramer)
  8. Hope for Sale (Farren/Kramer)
  9. The Edge Of the Switchblade (Kramer)
  10. Sharkskin Suit (Kramer)
  11. So Long, Hank (Kramer)
    [ Hidden Track ]
ウェイン・クレイマーのエピタフ三部作第一弾。ブレット・ガーウィッツが予告した通り、ペニー・ワイズのランディ・ブラッドビューリー、ランシドのブレット・リードら多数のプレイヤーが集結した。ガーウィッツ自身も加わっている。ライナー・ノーツを書いたのは他でもないヘンリー・ロリンズ。ミック・ファレンも多くの歌詞を提供した。メディアも「MC5のクレイマー」の復帰を大きく取り上げ、とにかくパンクのゴッド・ファーザーがメインストリームに復帰したとあって「鳴り物入り」の観があるリリースだった。この後しばらくしてスマッシュの招聘で来日ツアーまでも行っている。

全体としてエッジのきいたウェインのギターを前面に押し出した音作りになっているが、歌詞も秀れて、ミック・ファレンとウェインの太い知性が感じられる。エピタフは1の Crack In The Universe のプロモ・ビデオを制作したが、監督はジョニー・サンダースの伝記映画 Born To Lose を制作したレック・コワルスキーである。2のJunkie Romance はドラッグに走る若者に向けられたメッセージ・ソング。しみじみとしたバラードに乗せて歌われる。現在でもウェインはこの曲を必ずと言っていい程セット・リストに加えている。アンチ・ドーピングをうったえていくことは彼が自身に課した義務なのだ。
4のPoison は、もともと
MC5時代の3枚目アルバム"High Time "に収録されていた曲。10の「シャークスキン・スーツ」だが、「シャークスキン・スーツって何?周りの人にも訊いたけど分からなかった」とウェインのホームページに投稿していたアメリカ人らしき若者がいたので、一応付記しておくが、「シャークスキン」とは、鮫の表皮のような独特の「照り」感のある表面が少しざらざらした生地。
また、スポークン・ワード/フリー・ジャズのトラックが2曲(6と11)入っているのも注目される。6はフロリダのキー・ウェストに住んでいた当時の体験を語ったもの。
11曲目は隠しトラックで、作家チャールズ・ブコウスキーへのオマージュ。ウェインがブコウスキーを信奉者であることをこれで初めて知った。自分も好きな作家なので嬉しかった。酒と女と競馬とロサンジェルスをこよなく愛したブコウスキーは、日本では「パンクな」作家ということになっていて、イカニモそれっぽく対訳されているけれど、彼の文体はむしろ訥々として淡々とシンプルで、登場人物の会話は禅問答のようである。