翻訳した本が出版されたのでお知らせします。

原書の著者はこのサイトでも随所に登場するミック・ファレン(2004年11月に2回目の来日を果たした際の告知)。本の邦題は「アナキストに煙草を」。(メディア総合研究所から。)

原書が出版されたのは2001年。400ページに及ぶ長編。誰に依頼されたわけでもなく、出版してくれる版元のアテどころか翻訳が完成するのはいつなのか、そもそも完成できるのかさえ定かでないまま訳し始める。

当時はプロの翻訳家ではない。普通の会社員であるから翻訳作業に集中できる環境ではなく、時間を見つけてコツコツ訳していくのがやっと。翻訳を開始した時点では既婚者で、そのうち独身となり、最後の3分の1は認知症を発症した父親を介護するかたわら病院で訳した。そのくらい年月が経過したということ。

サクサク訳していける内容ではない。コミュニズムからグルーピー・カルチャーまで、アレイスター・クロウリーから超人ハルクまで、「虚栄の篝火」から「宇宙パイロット・ダン・デア」まで、歴史と政治と文学とサブ・カルチャーと、そしてもちろんセックス-ドラッグ-ロックンロールをごちゃ混ぜにして深い洞察と独自の歴史観をもって綴られるミック・ファレンの見識・知性・ユーモアについて行けず、翻訳作業は困難を極める。それでも歯を食いしばって格闘し続けた理由は、

この本が世の中のためになると思ったから。

そしてこの本をMC5ジャパン上に紹介するわけは、

MC5が好きな人ならこの本に興味を抱いてくれると思ったから。というのは控えめな言い方で、つまり、

MC5ファンにバカはいないと信じているから。

こんな人には必読の「手引書」になるはず。

  • 60年代ヒッピー/カウンター・カルチャーに興味がある人
  • 活動しているバンドがある人
  • 新聞、雑誌、書籍その他、ジャーナリズム/編集に携わっている人
  • ビートニク周辺に関心がある人
  • ロックのことを書いている人、評論している人、ロックについて知ったかぶりしたい人
  • 不良少年スピリットを持ち続けている団塊の世代の人、そして
  • 白痴化したメインストリームな文化に挑戦するクリエイティブな反逆を目論む人、仕掛けた人、そういう人のサポーター。

MC5/ウェイン・クレイマーとミック・ファレンのエピソードは当ウェブサイト上でも紹介されているが、本著ではその状況や背景がさらに詳細に記されていて、MC5ファンにとっても興味深い。

小さな活字が2段組でビッシリ・・・少なからぬ読者が読み飛ばしたくなるだろうが、「エッ、そうなの ?!」というロックなエピソードや事実がさりげなく随所に仕掛けられていて、それが本書の面白さでもあるので、きっちり読んでいくことをお勧めします。税込み2,625円。安くない。しかしコストは充分回収できる内容なので読んで下さい。

Back to top