カ・ク・メ・イ
彼等は日常、どのようなヤカラを相手にしなければならなかったのか。
スミスと話している最中に、やたら忙しそうなラジオのインタビュアーが、クルーと一緒に飛び込んで来た。ロング・ヘアーをカッコよくキメているけれど、着ているのはツイードの背広だ。マイクのスイッチを入れるまでは普通にしゃべっていたのに、オンになったとたん --- 「ハ〜イ!みなさんごきげんいかがですかあ?!」スマイルと DJ のパーソナリティーが毛穴という毛穴から吹き出した。
「こんにちは、ダグ・クロフォードです!きょうはツアーでイギリスを訪れているデトロイトのバンド、エムシーファイブ、モーター・シティー・ファイブのところにやって来ました!フレッド・スミス、だよね?キミたち、革命的バンドなんだって?」(と、デビッド・フロストばりの明瞭な発音で訊ねる。)
スミス: はあ??
クロフォード:「『かくめいてきばんど』!つまり聞くところによるとキミたちって、人をほんとに殴っちゃうんだって?人にショックを与えるバンドだそうだね?」
「ええと、う〜ん、そういうこともあるかもしれない. . . 」
「キミたち何をねらってるの?」
「オレたち何をねらってるかって??」
「つまりさ、どういうテクニックを使うの?つまり、曲を演奏しててさ、なんで人を殴ろうと思うわけ?どうして人にショックを与えて. . .」(そして例の快活な口調で)「怒らせてしまうのかな!?」
「う〜〜ん. . . オレたち、人を怒らせたいのかなあ. . .??」ここでスミスは真剣に考え込んでしまい答えが見つからない。
クロフォードはこの時点でテープのスイッチをガチャンと切る。ここからはラジオでは放送されなかった部分である。クロフォードが説明する。「あのねキミ、例えば僕がだね、もし音楽をやってるとして. . . キミたちがどういうポリシーでやってるんだか知らないけど、とにかく僕がマイクの前に歩み出てだね、眼の前の聴衆に向かって(相変わらず例のデビッド・フロストの発音で)『マザー・ファッカー!』って叫ぶとするでしょ、キミたちそれをやったって聞いてるよ、それって人を怒らせるだろ?どう考えたって年輩の人たちを怒らせるよね?」
スミス:「僕らの客に、年輩の人ってあんまりいないと思うんだけど. . . 」
後で彼は、マザー・ファッカーと言う言葉は「僕らの音楽を支持してくれる人たちに向けられた呼びかけで、彼らを怒らせるために言ってるんじゃない」と説明した。革命については、「イギリスじゃどうか知らないけど、少なくともアメリカでは、バンドでも、ある程度の政治意識を持たなければならない。アメリカの社会では今、ものすごくいろんなことが起きてるから。体制側でも、若者の間でも、政治意識において多くの変化が起きている。そういう新しい意識を表明するためには、放送禁止用語も敢えて使っていかなくちゃならないんだ。」
社会の大変動と革命について、彼等は僕らと変わらず「意識して」いるのだ。とはいえ、コンサートのオープニングでは「演説や革命のために来てるんじゃないぜ!ロックンロールをやりに来たんだ!」と叫ぶのである。. . . .
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