|
||||||
|
"Kick Out The Jams" は、当時MC5が頻繁に行っていたフリー・コンサートの形でライブ録音された。ファンとコミューンのメンバーにとって、それは喜びの祭典に他ならず、バンドとオーディエンスの一体感が伝わってくる。元ストゥージズのロン・アッシュトンがあるインタビューで語ったところによると、当日の楽屋は緊張感で張り詰め、ウェインを含め数人のメンバーはアシッドをやっていた、しかもウェインは普段弾いているストラトではなく、通常全く使っていないギブソンのSGを故意に用いたという。メジャー・デビューの初めてのライブ・レコーディングに、LSDをキメて使い慣れないギターで臨むという、若かりしウェイン・クレイマーのツワモノぶりを伝えるエピソードである。 オープニングのMCを務めたのは、トランス・ラブ・エナジーの幹部J.C.クロフォード。およそロック・マインドを持つ者であれば誰でも魂を揺さぶられるアジテーションである。当時メイン・ストリームであったアシッド・ロックやウェスト・コーストの軽いフラワー・ロックとは全く異質の、ワイルド・アメリカを象徴するメタリックでラウドなサウンド、ロブ・タイナーの野獣に似た叫び、クレイマーとスミスのデュアル・ギターから叩き出される強烈なリフとビート、まさにミッド・ウェスト重工業地帯のイメージそのもののサウンドは圧巻である。時代を越えて聴く者を圧倒する、ウォール・オブ・メタル・サウンドは、ストゥ−ジズと並んで70年代にブレイクするパンクの原点となった。Starship のクレジットに Sun Ra の名が見えるが、曲はMC5オリジナル、歌詞は、元になったSun Ra の詩をMC5が脚色して作詞したため、このようになっている。 ところがメンバーは全員、録音された結果に不満だった。「初めてのライブ録音で俺達は畏縮していた。いつものステージの迫力を十分に伝えていない。」という理由だったというから驚くが、そもそもレコーディングが決定した時エレクトラは「気に入らなければ録り直してよい」と約束していたのである。ところが会社側は後になって前言を翻し、バンドの強い要請にもかかわらず録音は2度と行なわれることはなく、ファイブ側に深い遺恨を残したのである。 それでも、当アルバムが全てのロック・ファンの棚に並んでいなければならない名盤であることに変わりはない。この時期、グランディでライブを行ったジョニ−・ウィンタースがMC5を聴き、「こういう音楽をテキサス以外でやってる奴らがいたなんて . . .」と、落胆したように漏らしたと伝えられている。 |
||||||