ストック・アイランドのキャビネット・ショップで働いてた時のことだ
ラジカセで アーロン・ネヴィルの新しいアルバムを聴いてた
蒸し暑い夏の午後
突然窓の外でどなり合う声が
ケニー!落ち着け!やめろ!
ケニーの声がする あのクソ野郎 俺が奴をダマしたってぬかしやがった!
ケニーと兄貴のヴィンスが猛烈な勢いで店に入ってきた
ケニーの眼は怒りに燃え 完全にキレてる
奴は店の奥に走っていき
ヴィンスが後を追いながら
叫ぶ やめとけ!ケニー!やめろ!
ケニーは奥のオフィスに駈け込むと フランクリンに飛びかかった
フランクリンは俺の店とフロアをシェアしてる電気屋だ
3人はののしり合い
ヴィンスは弟をはがい締めにして
2人は外に出て行った
ケニーは怒りでオカしくなってる
ヴィンスが言う
「フランクリンの野郎 次はケニーに痛い目にあわされても 俺は知らねえぞ」
ケニーの怒りはまだおさまらず あたりのキャビネットを蹴散らした
ヴィンスはケニーを車に乗せ 走り去る 弟のアタマを冷やすために
30分後 フランクリンがトラックで出かけようとしているところに
ケニーが現われた そしてさっきのことを謝り始める
ヴィンスと俺はそれを見ていた 30フィートくらい離れたところで
じりじり照りつける トロピカル・サンの下
ケニーの声は聞こえなかったが
その様子から また興奮し始めているのがわかった
フランクリンが口にした ファック・ユー ケニー ファック・ユー
そしてクラッチを切り ゆるゆる数フィート進むと
また言った ファック・ユー ケニー ファック・ユー!
俺はヴィンスに言った あいつ なんでさっさと行っちまわないんだ?
ケニーは追い付いてフランクリンのトラックに乗り込み
奴のシャツをつかんだ
フランクリンは言い続ける 「ファック・ユー ケニー!」
ケニーは奴を車の外に引きずり出し
砂だらけの地面に叩き付け
激しく殴った
3、4回 相手の頭にすごいパンチを
フランクリンは身を起こしかけたが
ケニーにアッパー・カットを食らう
強力なパンチ 病院の2文字を間違いなく思い浮かべる
そう 間違いなく病院を思い浮かべるような
ケニーは突然我に返り 大変なことをしでかしたと気付く
そして言った 「ザマみやがれ」
そして自分の車に乗り込み 走り去った
フランクリンの顔は 腫れ上がり始めてた
紫色に ナスみたいに
俺とヴィンスの前を通り過ぎる時 吐き捨てるように言った
「ありがとよ クソ野郎」
俺はいまだに理解できない
あの時フランクリンはなんで さっさと出発しなかったんだろう?
俺は 顔にあてる氷をフランクリンに渡した
奴はサツに電話し
俺達3人調書を取られ
そして俺らの誰一人として 誇りに値する者はいなかった
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