Lexington (2014) Industrial Amusement
IACD001

Side A

  1. Chasing a Fire Engine
  2. A.R.C.
  3. 13th Hour
  4. Burning Freeze

Side B

  1. The Wayne in Spain
  2. Elvin's Blues
  3. Taking the Cure
  4. Spectrum Suite

Wayne Kramer
and The Lexington Arts Ensemble

Wayne Kramer: Guitar, Composer, Producer
Dr. Charles Moore: Trumpet, Flugelhorn, Co-Composer, Arranger
Ralph "Buzzy" Jones: Reeds
Phil Ranelin: Trombone
Bob Hurst: Acoustic Bass

Doug Lunn: Electric Bass
Tigran Hamasyan: Piano
Brock Avery: Drums, Percussion
Eric Gardner: Drums, Percussion

"Wayne Kramer and The Lexington Arts Ensemble"名義で録音された。青字で記した3人以外は、これまでもウェインとたびたび組んできたミュージシャンたち。Dr. Charles Mooreは、デトロイト時代にMC5とジャズ・セッションを行なっていたトランペット奏者で、Sister Anne のホーンセクションも担当。本作でもウェインと共に作曲と編集に携わったが、このCDがリリースされて間もない2014年5月に73歳で亡くなった。(Dr. の称号は「音楽民俗学」の博士号を持ち、複数の大学で教鞭を取っていたから。)サックスのRalph "Buzzy" Jonesは、ジョン・シンクレアのFull Circle にもウェインと共に参加している。Dr. MooreもBuzzyも、ウェインとはデトロイト時代にシンクレアを通じて知り合った。ピアノのTigran Hamasyan は、ジャズ界で将来を嘱望された気鋭の何だか凄いジャズ・ピアニストらしい。

曲は全てウェインとDr. Moore が約2ヶ月で書き終えた。歌詞は全く付けられていない。メンバーにはあらかじめ「予習」しておいてもらい、各自充分に曲を「内面化」してもらってから皆で集まり、インプロビゼーションを含めライブで一発録りしていったという。各ソロは全てファースト・テイク。2曲目、The A.R.C. とは 、人体実験を行なっていたレキシントンの薬物中毒研究センター(Addiction Research Center)のことである。ここで CIAが囚人を使ってLSDの実験を行なっていたのだ。暴走する政府機関とマッド・サイエンティストの狂気が伝わってくる。阿片中毒者の吐息を彷彿とさせるような13th Hour は、ジャズのスタンダードになってもおかしくない名曲だと思う。このアルバムをロックと考える人はいないだろうが、冒頭の Chasing Fire Engine や、Taking the Cure のウェインのギターソロを聴くと、MC5 からの彼のキャリアの集大成を感じさせる出来映えだと思う。

PledgeMusic で資金を募り、このメンバーですでにライブ活動を行なっており、ロック・ファンにはさぞかし批判されるだろうと覚悟していたウェイン自身の予想に反し、オーディエンスの反応は上々だそうだ。