"Kick Out The Jams" - MC5の、というよりデトロイト・ロックの代名詞ともなっている有名なフレーズだけれど、英語を母国語とする人でもその意味するところは意外にわからないようである。
実はこれ、演奏中の他のバンドに向けられた「ヤジ」なのだ。
元はと言えば、ロブ・タイナーがまだハイスクールの生徒でゲイリー・グリムショウらビートニク友達とジャズのジャム・セッションを聴きに行っていた頃、あまりにひどい演奏をするプレイヤーに「ヘタクソ、引っ込め!」くらいの意味で使っていたのである。
やがてMC5が結成され、グランディ・ボールルームにもグレイトフル・デッドなど国内のビッグ・バンドが多数やって来るようになった。ところが彼らの音楽はデトロイト・ロックの基準からすると「軽量級フォーク・ロックで、リズムもドライブもない」(ロブ・タイナー)どうしようもなく女々しく、軟弱なサウンドだった。で、デトロイトのナラズ者MC5は俄然、ちょうどその頃からバンド内でフザけて言い合うようになっていたこのフレーズを使って、これら気の毒なバンドをステージ袖からヤジり始めたのである --いつまでもジャムってんじゃねェよ!早いとこ引っ込みな!!それにロブが短い歌詞をつけて作られたのが Kick Out The Jams だったのだ。