MC5はジャズである。

と言ったら驚く人もいるかもしれない。チャック・ベリー、ジェイムス・ブラウン、ザ・フ−、スト−ンズなど、R&R/R&B、ブルースに連なるバンドから大きなインスピレーションを受けたファイブだったが、彼らのサウンドを支えたもう一本の太い柱は、サン・ラ、ジョン・コルトレーンらによって代表される「フリー・ジャズ」だった。ファイブの周辺には多くのフリー・ジャズ・ミュージシャンが住んでおり、彼らはたびたびセッションを行っては互いに影響し合っていた。ウェスト・コーストのロックバンドなどよりはるかに、MC5はこれらジャズ・ミュージシャンに親近感を抱いていたのである。彼らは一般に知られているよりはるかに「実験的な」バンドだった。日曜日の午後などはメンバーが集まって一曲延々30分にもわたるジャズのインプロビゼーションを繰り広げていたのである。

彼らが特に傾倒していたのが、サン・ラの「コズミック・ジャズ」だった。ヒッピー・カルチャーにおけるのと同様に、「宇宙」は、MC5を語る重要なキー・ワードなのだ。「意識を宇宙空間へ」飛ばすサウンドを彼らは目指したのであって、例えばアルバム「キック・アウト・ザ・ジャムス」の最後に収録されている「スター・シップ」なんかを聴くとよくわかる。ウェインが好んで使う表現に「俺たちは、アンチ・ニクソン、アンチ・ウォーだっただけじゃない。アンチ・グラヴィティー(=重力)だったんだ!」というのがあるくらい、MC5は宇宙へ飛び出したかったのである。1967年6月18日には、デトロイト・コミューニティー・アート・ホールで、サン・ラと彼のバンド(His Myth Science Arkestra)がMC5と共演している。

フリー・ジャズとは、アヴァンギャルド・ジャズと並ぶアンダーグラウンドなジャズの形式。最初に一つのテーマが提示された後、プレイヤーは全てのコード進行を無視して、どんな方向に進んでも(どんなメロディーを演奏しても)いいのである。従来のジャズの概念を全く逸脱したスタイルであり、最初にオ−ネット・コールマンがこの形式を提示した時は、それが「音楽」であるかどうかさえ論議されたという。