安全保障関連法案が衆議院を通過した2015年夏、MC5 Japanをアーカイブ化することを決めた。ここで意図する「アーカイブ化」とは、今後このウェブサイトに更新はなく、現状のままサイバースペースをひっそりと漂うという意味である。時々英語ページを加えたり、リンクの修正程度は行なうかもしれないが、基本的に新しい情報が加わることはない。(最後のアップデートとして、ウェインのセクションに新譜の情報を加えておいた。)
MC5 Japan は、20世紀につかの間存在したロックバンドのレガシーを日本人に伝えることを目的に開設したウェブサイトであり、それについては語り尽くした感がある。オープンしてから13年以上を経て、生存中のメンバーの現在の活動については、誰もがいくらでも情報を得られる時代になった。このサイトを見る人のどれだけが日常的に創作活動を行なっているか知らないが、私は混沌が生み出すダイナミズムを信じる者である。どんな分野においても、mono、 つまり単一な世界から大したものは生まれないと思っている。MC5というバンドの音楽が多種多様な音楽スタイルや紆余曲折を取り込んで培われていったことに気づいて欲しい、バンドで活動し、MC5をリスペクトしていても、単にキックアウトザジャムズなヤツで終わって欲しくない、文学、絵画、政治、いろんなものにインスパイアされ、目の前に存在する無数の人間をしっかりと見つめ、そして自分たちの創造的な音を見つけていって欲しいという願いも込めて築いていったウェブサイトである。アーカイブ化された後も、どんなに古色蒼然たるサイトに見えようと、ここに掲載されている情報の質には鉄壁の自信がある。時には見に来てくれれば嬉しい。
かねてから考えていたアーカイブ化だが、今以上に最適なタイミングはないと感じ、ウェイン・クレイマーにも数多くの歌詞を提供し、2013年に他界したミック・ファレンが死の前年に書いた詩を掲げて、安全保障関連法案に対する反対を表明し、フィナーレを飾ることにした。MC5 のウェブサイトの最後が何でミック・ファレン?と思う人もいるかもしれないが、この詩を読んで分からなければ仕方が無い。
むろん今これを読む人の中にも、集団的自衛権を支持する人、どうでもいいと思っている人、自分には関係ないと考えている人はいるだろう。だが、そういう人も、この先ダマされないよう気を付けた方が良い。なぜなら
「国家存立の危機」を捏造することは、黒犬たちにはとても簡単なことだ。そしてそれこそが、70年前太平洋戦争に突き進んだ彼らが行なったことである。
11本の法案・改正案は、明らかな意図をもって「安保関連法案」として一括して提出され、個別に審議されることなく強行採決された。いくつもの法案の、その複雑に入り組んだ条文1行1行の間に、どんな謀略が潜み、ほくそ笑むのか、私たちは知る由もない。
しかし、55年前、平和主義と戦争反対の、あれほど大きなうねりの中でさえ、日米安保条約は締結されたのだ。とうてい今回のこの安保関連法案の成立を止められるはずがないのである。
だから、それでもなお我々が限られた寿命の中で続けていくべきことは、黒犬たちを脅かすことである。お前たちは見張られているんだぞと、彼らを脅し、尻尾を巻いて怖じ気づかせることである。
だから私たちは声高に、WHYを突き付け、NOを叫ぶことを決してやめてはならない。孤高のガンマンが握るリボルバーの、その弾丸が尽きようとも。
2015年8月 新宿にて